岐阜県 T様 GUCCI(グッチ)スニーカー オールソール交換修理/カップソール→EVAスポンジ+Vibram1030/側面本革処理
岐阜県 T様
GUCCI(グッチ)スニーカー
オールソール交換修理/カップソール→EVAスポンジ+Vibram1030/側面本革処理
今回ご依頼いただいたのは、岐阜県にお住まいのT様よりお預かりしたGUCCI(グッチ)のスニーカーです。
さすがはグッチらしい、ラグジュアリーで洗練されたデザイン。革の質感やロゴの入り方、シルエットに至るまでハイブランドらしい上質な空気感が漂う一足ですが、残念ながら靴底(アウトソール)が経年劣化により割れや剥がれが発生していました。これは**「加水分解」**と呼ばれる現象が原因です。
■「加水分解」とは
加水分解とは、ウレタンや合成樹脂などの素材が空気中の水分と反応し、化学的に分解されてしまう現象です。多くのスニーカーやスポーツシューズに採用されているウレタン系のミッドソールやカップソールが、履かずに保管していた場合でも劣化してしまうのはこのためです。
T様のGUCCIスニーカーも、まさにこの加水分解により、ソールが完全に割れて使用不能な状態に。接着剤では修復不可能で、**ソール全体の交換=「オールソール修理」**が必要となりました。
■GUCCIのスニーカーに多い「一体型カップソール」の課題
今回のスニーカーは、GUCCIオリジナルの「カップソール」と呼ばれる、靴底のアウトソールと側面を一体化させた構造のモデルでした。
しかしこのカップソール、同一規格のものは入手困難なのが現状です。GUCCIをはじめとする海外ブランドのオリジナルソールは市場流通しておらず、国内の修理資材業者でも手配できないケースが多く、オリジナル形状での再現は事実上不可能です。
そこで、当店では今回側面に本革を縫い付けて「疑似的なカップソール感」を演出しつつ、新たなソール構成へと変更する方法を提案させていただきました。
■修理内容の全体工程
1. 旧ソールの解体と下処理
まずは加水分解してボロボロになった元のソールをすべて取り外し、靴本体の底部を露出させます。
加水分解したウレタンは非常に脆く、ゴムベラなどでこすっただけで粉のように崩れ落ちていきます。素材によってはアッパーにまで劣化の粉が付着しているため、念入りなクリーニングも行いました。
続いて、アッパー側と新たなミッドソールを接合するための**下処理(グラインダーによる研磨、脱脂など)**を丁寧に施し、接着の準備を進めます。
2. ミッドソールの作成とマッケイ縫い
次に、新しいミッドソールとして、EVAスポンジ素材を成形し、靴底に合わせて縫い付けていきます。
EVA素材は軽量で弾力があり、クッション性も抜群。歩行時の衝撃を和らげてくれるので、スニーカーに適した素材です。
このミッドソールをアッパーと強固に接合するために、「マッケイ縫い」と呼ばれる手法を用いて靴本体に直接縫製。
3. 本革による側面処理(フェイクカップソール化)
GUCCIスニーカー特有の「サイドから包み込むような一体型の形状」を再現するため、本革素材をサイドに沿って縫い付けるオパンケ縫い作業を行いました。
これにより、「カップソール風の見た目」を復元しながら、内部構造はEVAスポンジ+アウトソールという機能性重視の構成とすることが可能に。外観のラグジュアリー感を損なうことなく、機能面を向上させる修理が実現できました。
また、この側面の革は靴全体の耐久性を高める効果もあり、ソールの縫い付け部分を保護する役割も担っています。
4. Vibram1030のアウトソール取付と仕上げ
アウトソールにはVibram社製1030ソールを使用しました。Vibram(ビブラム)とは、イタリアに本社を持つ高性能ソールメーカーで、登山靴やミリタリーブーツにも採用される堅牢さとグリップ力が特徴です。
この1030モデルは、ラバー素材で耐摩耗性に優れ、都市部での歩行からスポーツ利用まで幅広く対応。クッション性や防滑性も高く、GUCCIの上品な印象を壊さないデザイン性も兼ね備えています。
これを新しく成形したミッドソールに圧着し、さらにマッケイ縫いによる底縫いでしっかりと固定。これにより、ソール剥がれのリスクを大きく軽減できます。
5. 仕上げと最終チェック
全体の工程が完了したら、余分な接着剤を除去し、ミッドソールと側面の革との継ぎ目を滑らかに整えます。靴全体のクリーニングと磨きを施し、最終の仕上げ工程へ。
ソールの曲線や厚みを微調整し、履き心地やバランスを再確認。T様にも最終確認いただき、無事にお引渡しとなりました。
■修理後の感想と考察
修理前とは見違えるように生まれ変わったこのGUCCIスニーカー。ソールはすべて新品に交換され、さらに機能性や耐久性も大幅に向上しました。
・オリジナルを尊重しつつ、現代的な素材と構造でアップデート
・外観デザインと履き心地のバランスを両立
・加水分解への再発防止にも配慮した設計
これらを意識しながら行った修理は、スニーカー修理の中でも特に手間と技術を要する内容でしたが、ご満足いただける仕上がりとなりました。
■修理料金と納期(参考)
-
オールソール交換(EVA+Vibram1030)
-
側面本革処理(縫製含む)
-
オパンケ縫い+マッケイ縫い施工
参考価格:19,800円~(税込)
納期:約3〜4週間程度
※使用素材や靴の状態により前後いたします。
■まとめ
加水分解した靴も、素材選定と技術次第で「再び履ける状態」にまで修復可能です。特にGUCCIなどの高級スニーカーは、簡単に買い直せるものではなく、修理して長く愛用されたいというお客様も多くいらっしゃいます。
「履ける」「使える」だけでなく、「持っていて気持ちの良い」一足へ――
いずみ靴店では、そんな靴修理を目指しています。
🔧 #いずみ靴店
🏠 #倉敷市玉島
📍 #岐阜県
👟 #GUCCI #グッチ #スニーカー
⚠️ #加水分解 #オールソール
🪡 #オパンケ縫い #マッケイ縫い
📏 #EVAスポンジ #本革側面処理
🦶 #Vibram1030 #カップソール再現