靴修理
2025年07月26日

倉敷市 M様 RED WING(レッドウィング)アイリッシュ・セッター カスタムオールソール交換修理事例報告


倉敷市 M様

RED WING(レッドウィング)アイリッシュ・セッター

カスタムオールソール交換修理事例報告


◆ご依頼の背景

今回ご依頼いただいたのは、倉敷市在住のM様よりお預かりした「RED WING(レッドウィング) アイリッシュ・セッター」です。アイリッシュ・セッターといえば、レッドウィングの中でも長年にわたり根強い人気を誇る定番ワークブーツ。グッドイヤーウェルト製法により耐久性と修理性に優れ、独特のオーラと質実剛健な作りで多くのファンを魅了しています。

今回お預かりしたアイリッシュ・セッターは、長年使用されたことでソールが摩耗し、さらにオーナー様から「オリジナルの白いクレープソールではなく、もっと引き締まった印象のヒール付きソールへ変更したい」とのご希望があり、機能面と見た目の両面からソールのカスタム修理を行う運びとなりました。


◆修理の目的とご要望

  1. 見た目の印象を変えたい
     → クラシックな白いフラットソール(トラクショントレッド)から、よりシャープな印象を持つ「ヒール付き」へ変更したいというご要望。

  2. 耐久性・機能性の向上
     → 普段から歩く距離が長く、足腰に負担がかからない仕様で、かつ滑りにくく安定性のあるパターンを希望。

  3. できる限り素材は本格仕様で
     → レッドウィングの魅力を損なわず、本革や伝統的な修理方法を取り入れながら再構築すること。


◆修理工程の詳細

【1】分解・解体作業

まずは、オリジナルの白いトラクショントレッドソールを取り外す工程からスタートします。この作業は、ブーツの作りを崩さず、丁寧に接着部を剥がしていく繊細な工程です。グッドイヤーウェルト製法の靴は、アッパー・ウェルト・ミッドソール・アウトソールが層になって組まれており、力任せではなく、道具と感覚で「靴がどこでつながっているか」を見極めながら解体していきます。

【2】ウェルトと本体の点検

分解後、ウェルトの状態を確認します。今回は使用年数の割に状態は良好で、再利用が可能でした。ただし、古いコルクフィラーは加水分解や圧縮により劣化が進んでいたため、除去して新しいコルクを入れ直す必要がありました。

【3】中物(コルク)の詰め替え

中物には天然のコルクを用いています。これはクッション性と通気性を保ち、足裏の馴染みにも寄与する素材です。見えない部分ですが、履き心地に直結する重要な要素ですので、耐久性の高い新しいコルク材に全面的に入れ替えました。

【4】ミッドソール(中底)の交換

今回の修理では、ミッドソールに本革を採用しています。元々のEVA素材のミッドソールとは異なり、革ミッドは経年と共に足に馴染んでいき、履き込むことで味わい深いフィット感と風合いが得られるのが特徴です。厚み・質感ともに最適なベンズ革(植物タンニンなめしの牛革)を選定し、しっかりと成形・加工して取り付けました。

【5】ソールの選定と取り付け(Vibram430)

ソールには、**Vibram社の「430ソール」**を採用しました。これは油や滑りに強いコンパウンドで構成されており、アウトドアや街歩き両方に適した耐久性を持っています。独特のラグパターン(ギザギザしたソールの凹凸)は地面をしっかりとグリップし、滑りやすい地面でも高い安定感を発揮します。

またヒールには同じくVibram430ヒールを取り付けました。元々フラットなブーツからヒール付きに変更することで、シルエットが引き締まり、ビジネス寄りにもカジュアル寄りにも振れる汎用性の高いスタイルへと生まれ変わりました。

【6】出し縫い(ウェルトとソールの縫合)

すべてのパーツが組み上がったら、最後に「出し縫い」と呼ばれる工程でウェルトと本革ミッドソール、アウトソールを一体化します。この出し縫いは靴の外周に縫い目が見える縫製方法で、グッドイヤー製法の特徴であり、視覚的にもクラシックで重厚な印象を与えます。

当店では八方ミシンによる手仕上げ縫製を行っており、一本一本の縫いが丁寧で耐久性にも優れています。


◆修理完了後の仕上がり

完成したブーツは、全体的にぐっと引き締まった印象に生まれ変わりました。アイリッシュ・セッターの無骨なアッパーデザインと、シャープなヒールソールの組み合わせは、カジュアルながらも大人の落ち着きを感じさせる一足に。アウトドアや街歩きはもちろん、バイクやキャンプなどアクティブなシーンにも相性抜群です。

ミッドソールの本革は今後の経年変化が楽しみでもあり、履き込むことで足により馴染み、世界で一足だけの「自分仕様」になっていくのもまた魅力です。


◆お客様の声(M様)

「大満足の仕上がりでした。思い切ってソールを変更して本当に良かったです。ヒール付きになったことで見た目もスッキリし、歩きやすさも格段に上がりました。これからも大事に履き続けます!」


◆技術者コメント(いずみ靴店)

今回のようなカスタムオールソール交換は、ただパーツを交換するだけではなく、お客様のご使用目的やお好みに応じて、デザイン・素材・仕上げすべてをトータルで考慮する必要があります。特にヒール付きソールへの変更はブーツの重心や歩行感覚にも影響するため、内部構造やバランスを細かく調整しながら仕上げています。

レッドウィングは長く使える靴だからこそ、ライフスタイルに合わせた修理やカスタムを取り入れて、さらに愛着ある一足へ育てていけるようお手伝いしています。


◆使用素材・仕様

  • ソール:Vibram430 ラグソール

  • ヒール:Vibram430ヒール

  • ミッドソール:本革(ベンズ)

  • 中物:天然コルクフィラー

  • 縫製方法:グッドイヤー製法/出し縫い(八方ミシン使用)


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